■角の二等分線と補助線

【比例←相似図形】
 平行線の性質(相似)を利用すると,比例の関係を示すことができます.
 例えば右図1において
ABC∽△DBEならばBD:DA=BE:EC
が成り立つと言えます.

  • 比例の関係を証明したいときには,平行線になるように補助線を引くとうまくできます.
  • この頁では,角の二等分線を題材にして,補助線の引き方を練習します.
図1
【角の二等分線の性質】
 △ABCにおいて右図2のように線分ADが∠Aを二等分しているとき,
BD:DC=BA:AC
が成り立ちます.
※この定理は中学校では習いませんので,中学生に対して「覚えなさい」とか「この問題がよく出る」というようなことは言えませんが,ヒントを示してこの定理を誘導する問題ならありえます.
 角の二等分線の性質は高校数学Aの教科書で登場しますが,数学Aの中で平面幾何を選択することはほとんどないため,この定理に接する機会はめったにありません.

≪注意すべきこと≫
 右図2ではDBCの中点ではありません.右図2のように頂点Aが右寄りになっているとき∠BAD=DACとしたとき(角の二等分線を引いたとき)には,BDの方がDCよりも長くなります.
 まずはじめに,この頁ではDBCの中点になっている話をしているのではなく,ADが∠Aの二等分になっている場合を取り扱っていることに注意してください.
 △ABCが二等辺三角形になるような特別な場合を除けば,一般にはBD≠DCになり,角の二等分線ADによって辺BCは二等分されません.
図2
例1
 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,右図3のようにCからDAに平行線を引きBAの延長との交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.
(証明)
AD//ECだから,平行線の性質(または相似図形の性質)により
BD:DC=BA:AE…(1)
また,次のようにしてAE=ACを示すことができる.
仮定によりADは∠BACの二等分線だから
BAD=DAC…(2)
平行線の同位角は等しいから
BAD=AEC…(3)
平行線の錯角は等しいから
DAC=ACE…(4)
(2)(3)(4)より
AEC=ECA…(5)
ACEは両底角が等しいから二等辺三角形で
AE=AC…(6)
(1)(6)より
BD:DC=BA:AC…(証明終り)
図3



【要約】
  • 補助線として平行線を引くと,
    相似図形ができて比例が証明できる.
問1
 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,右図4のようにBからDAに平行線を引きCAの延長との交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.次の空欄を埋めてください.
(証明)
BE//DAだから,平行線の性質(または相似図形の性質)により
BD:DC=EA:…(1)
また,次のようにしてEA=BAを示すことができる.
仮定によりADは∠BACの二等分線だから
BAD=…(2)
BE//DAで平行線の同位角は等しいから
BEA=…(3)
BE//DAで平行線の錯角は等しいから
EBA=…(4)
(2)(3)(4)から
BEA=…(5)
BEAは両底角が等しいから二等辺三角形で
BA=…(6)
(1)(6)より
BD:DC=BA:…(証明終り)
採点するやり直す
図4
問2
 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,右図5のようにCからABに平行線を引きADの延長との交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.次の空欄を埋めてください.
(証明)
はじめに,△BDA∽△CDEを使ってBD:DC=BA:ECを示し,次にEC=ACを示すという方針で証明します.
ABDと△ECDについて
AB//CEにより,平行線の錯角が等しいから
BAD=…(1)
対頂角は等しいから
BDA=…(2)
(1)(2)により対応する2組の角がそれぞれ等しいから
ABD∽△…(3)
(3)により
BD:DC=BA:…(4)

次に△AECについて
仮定によりADは∠BACの二等分線だから
DAC=…(5)
AB//CEにより,平行線の錯角が等しいから
DEC=…(6)
(5)(6)より△AECは両底角が等しいから二等辺三角形で
EC=…(7)
(4)(7)により
BD:DC=BA:…(証明終り)
採点するやり直す
図5
問3
 △ABCにおいて∠Aの外角の二等分線が辺BCの延長と交わる点をDとするとき,右図6のようにDからCAに平行線を引きBAの延長との交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.次の空欄を埋めてください.
(証明)
はじめに,△BED∽△BACを使ってBD:DC=BE:EAを示し,次にEA=ED,さらにBE:ED=BA:ACを示すと証明できます.
BDEと△BCAについて
CA//DEにより,平行線の性質(相似図形の性質)から
BD:DC=BE:…(1)
EADについて
平行線の錯角は等しいから
CAD=…(2)
仮定によりADは∠Aの外角の二等分線だから CAD=…(3)
EADは両底角が等しいから二等辺三角形になり
AE=…(4)

(1)(4)により
BD:DC=BE:…(5)
さらに,△EBD∽△ABCにより
BE:ED=BA:…(6)
(5)(6)により
BD:DC=BA:…(証明終り)
採点するやり直す
図6
問4
 △ABCにおいて∠Aの外角の二等分線が辺BCの延長と交わる点をDとするとき,右図7のようにCからABに平行線を引きADとの交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.次の空欄を埋めてください.
(証明)
BDAと△CDEについて
BA//CEにより,平行線の性質(相似図形の性質)から
BD:DC=BA:…(1)
ACEについて
平行線の錯角は等しいから
FAE=…(2)
仮定により
FAE=…(3)
(2)(3)より△ACEは両底角が等しいから二等辺三角形になり
EC=…(4)

(1)(4)により
BD:DC=BA:…(5)
採点するやり直す
図7
問5
 △ABCにおいて∠Aの外角の二等分線が辺BCの延長と交わる点をDとするとき,右図8のようにCからADに平行線を引きABとの交点をEとおくと,BD:DC=BA:ACとなることを証明することができます.次の空欄を埋めてください.
(証明)
BDAと△BCEについて
DA//CEにより,平行線の性質(相似図形の性質)から
BD:DC=BA:…(1)
AECについて
平行線の同位角は等しいから
FAD=…(2)
平行線の錯角は等しいから
DAC=…(3)
仮定によりADは∠Aの外角の二等分線だから
FAD=…(4)

(2)(3)(4)により
ACE=…(5)
AECは両底角が等しいから二等辺三角形になり
AE=…(6)
(1)(6)より
BD:DC=BA:…(証明終り)
採点するやり直す
図8
【証明の進め方】
 ここまでは実際の証明方法を学んできましたが,慣れてくれば鉛筆を持つ前に全体の見通しを立てることが重要です.

問題 左欄のように補助線をひいて証明を行うためには,どのように証明を進めたらよいでしょうか.(証明方法はいろいろ考えられますが,ここでは右欄の方法のうちでよいものを選んでください.)
はじめに左欄から1つ選び,続いてこれに対応する進め方を右欄から選んでください.)

 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,BD:DC=BA:ACとなることを証明するために,図のようにDからBAに平行線を引きACとの交点をEとおいたとき

 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,BD:DC=BA:ACとなることを証明するために,図のようにDからCAに平行線を引きABとの交点をEとおいたとき

 △ABCにおいて線分ADが∠Aを二等分しているとき,BD:DC=BA:ACとなることを証明するために,図のようにBからACに平行線を引きADの延長との交点をEとおいたとき

 △ABCにおいて∠Aの外角の二等分線と線分BCの延長との交点をDとするとき,BD:DC=BA:ACとなることを証明するために,図のようにBからCAに平行線を引きADの延長との交点をEとおいたとき
【考え方のポイント】
相似図形の性質からBD:DC=BE:ACを示し,
二等辺三角形の性質からBE=BAを示せば,
BD:DC=BA:ACが証明できる.
相似図形の性質からBD:DC=EA:ACを示し,
二等辺三角形の性質からEA=BAを示せば,
BD:DC=BA:ACが証明できる.
相似図形の性質からBD:DC=BA:ECを示し,
二等辺三角形の性質からEC=ACを示せば,
BD:DC=BA:ACが証明できる.
相似図形の性質からBD:DC=AE:ECを示し,
二等辺三角形の性質からAE=DEを示せば,
BD:DC=DE:ECが示せて,
さらに相似図形の性質からBD:DC=BA:ACが証明できる.
相似図形の性質からBD:DC=BE:EAを示し,
二等辺三角形の性質からEA=EDを示せば,
BD:DC=BE:EDが示せて,
さらに相似図形の性質からBD:DC=BA:ACが証明できる.

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