■2直線の交点
【直線の方程式】
 複素数平面において,点A(z1)を通り,複素数z2に平行な直線の方程式は
z=z1+tz2 (tは実数)
(解説)
 右図1のように,tを変化させると,tz2は直線の方向に伸び縮みするから,z=z1+tz2は,点A(z1)を通り,複素数z2に平行な直線上の点を指し示します.
この直線の方程式において,z=z1+tz2は「直線の中に埋め込まれたもの」を表しているのではなく,原点から直線上の点に向かうものでることに注意
【2直線の交点を求めるための元になる考え方】
(複素数の1次独立)
(1) z1, z2は平行でなく,0でもない複素数,p,qは実数とする.
pz1+qz2=0 ならば p=q=0
が成り立つ.
(2) z1, z2は平行でなく,0でもない複素数,p,q,s,tは実数とする.
pz1+qz2=sz1+tz2 ならば p=s, q=t
が成り立つ.
(解説)
 2つの複素数z1 , z2が平行であるときは,一方を他方の実数倍として表すことができます.
z1=sz2 (またはz2=tz1
 しかし,2つの複素数z1 , z2が平行でなく,0でもないとき,
z1=sz2 (またはz2=tz1
となることはありません.

(1) 平行でなく,0でもない複素数z1, z2について,
pz1+qz2=0…(A)
のとき,もし,p≠0ならば
z1=−z2
となって,z1, z2が平行でないという仮定に反します.したがって,p=0でなければなりません.
 このとき,
0z1+qz2=0
qz2=0 (z2≠0
により
q=0でなければなりません.
以上により,(A)が成り立つならばp=q=0でなければなりません.

(2) pz1+qz2=sz1+tz2 …(B)ならば
(p−s)z1+(q−t)z2=0
と変形できるから,(1)の結果からp−s=0, q−t=0でなければなりません.
したがって,(B)が成り立つならばp=s, q=tになります.
(係数比較が各々等しいといえるということです.)
(2直線の交点の求め方)
【例1】
(1) 右図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OAの中点COB2:1に内分する点をDとするとき,CBADの交点Pを表す複素数をz1 , z2を用いて表してください.
(2) さらに,OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数をz1 , z2を用いて表してください.
【解き方1】(複素数で直線の方程式を作って交点を求める方法)
(1) Aを表す複素数はz1
DOB2:1に内分する点だから
=z2
.=z2−z1
直線ADAを通り,に平行な直線だから,その方程式はsを実数として
z=z1+s(z2−z1 )=(1−s)z1+z2…(i)
と書ける.

 他方で,Bを表す複素数はz2
COAの中点だから
=z1
.=z1−z2
直線BCBを通り,に平行な直線だから,その方程式はtを実数として
z=z2+t(z1−z2 )=z1+(1−t)z2…(ii)
と書ける.

 求める交点P(z)は(i)(ii)の両方とも満たすから
(1−s)z1+z2=z1+(1−t)z2…(iii)
ここで,z1 , z2は平行でなく,0でもないから,係数比較により
1−s=
=1−t
この連立方程式を解くと
s= ,t=
(i)または(ii)に代入すると
z= …(答)
(2)
 EABの内分点だから,
またはsz1+tz2 (s+t=1)
の形に書ける.

の定数倍としてこの形になるのは
…(答)
右上に続く→↑
図1

→続き
【解き方2】(中学校で習う相似図形と比例の関係を使って解く方法)
 平行線を引けば相似図形ができ,相似図形を使えば,他の辺の比を利用して辺の比を求めることができます.
 右図のようにDからBCに平行な直線を引き,OAとの交点をSとすると,△ODS△OBCとなるから,
OS:SC=OD:DB=2:1
また,OC=CAだから
OS:SC:CA=2:1:3
△ACP△ASDとなるから,
AP:PD=AC:CS=3:1
よって,PAD3:1に内分する.
(1) A(z1 ), D(z2 )だから
Pを表す複素数は,=…(答)
(別解)
 CからADに平行な直線を引き,OBとの交点をTとすると,△OTC△ODAとなるから,
OT:TD=OC:CA=1:1
また,OD:DB=2:1だから
TD:DB=1:1
△BPD△BCTとなるから,
CP:PB=TD:DB=1:1
したがって,PBC1:1に内分する.
Pを表す複素数は,=…(答)
(2) CからOEに平行な直線を引き,ABとの交点をUとすると,△ACU△AOEとなるから,
AU:UE=AC:CO=1:1
また,CP:PB=1:1だから
UE:EB=1:1
よって,EAB2:1に内分する.
Eを表す複素数は
…(答)
【解き方3】(チェバの定理を使って解く方法)
チェバの定理とは,右図のような△ABCにおいて,頂点からA,B,Cから点Pを通る直線を引いて,対辺との交点をR,S,Tとするとき,
=1
が成り立つというものです.
この関係は,右図のように分母と分子を順に選んで一周すれば,次の形に書くこともできます.
=1

証明は,右図のようにAを通ってBCに平行な直線を引いて行うことができます.
=
=
=
ゆえに
==1
(2) 例1の問題について,チェバの定理を適用すると,(2)の問題が先に解ける.
××=1
=2
よって,AE:EB=2:1
Eを表す複素数は
…(答)
(1) k
が,B(z2 ), C( )の内分点
=
となるのは,p=1, q=1のときで
…(答)(k=
【問題1】
 右図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OA1:2に内分する点をCOB2:3に内分する点をDとする.
(1)CBADの交点Pを表す複素数zz1 , z2を用いて表してください.
(2)OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数wz1 , z2を用いて表してください.
(解き方1)
(1)直線ADは,A(z1) を通り,=z2−z1に平行な直線だから,
z=z1+s(z2−z1 )sは実数) …(i)
と書ける.
 また,直線BCは,B(z2) を通り,=z1−z2に平行な直線だから,
z=z2+t(z1−z2 )tは実数) …(ii)
と書ける.
AD, BCの交点は(i)(ii)の両方とも満たすから
z1+s(z2−z1 )=z2+t(z1−z2 )
(1−s)z1+sz2=tz1+(1−t)z2
z1 , z2は平行でなく,0でもないから,係数比較により

s, tについての上記の連立方程式を解くと
以上により,Pを表す複素数z
(2)
E(w)ABの内分点だから
w= (m,n>0)
の形になる.
z=
の定数倍で,これが成り立つのは
(解き方2)
(1)  DからBCに平行な直線を引き,OAとの交点をSとすると,
OS:SC=OD:DB=2:3
また,OC:CA=1:2だから
OS:SC:CA=OD:DB=2:3:10

したがって,
(正しいものを選んでください)
AP:PD=2:1 AP:PD=10:3
AP:PD=10:13 AP:PD=13:3

A(z1 )D()だから
z==

(2)
E(w)ABの内分点だから
w= (m,n>0)
の形になる.
z=
の定数倍で,これが成り立つのは
w=
(解き方3)
(2)
 チェバの定理により
××=1
=
(正しいものを選んでください)
AE:EB=3:4 AE:EB=3:7
AE:EB=4:3 AE:EB=4:7

したがって
w=
(1)
k
が,B(z2 ), C( )の内分点
=
となるのは,p:3q=3:4 → 4p=9q
(正しいものを選んでください)
p:q=4:9 p:q=9:4
p:q=4:3 p:q=3:4

== …(答)(k=
≪一般化して公式を作ろう≫
【問題2】
 右図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OAm:nに内分する点をCOBh:kに内分する点をDとする.
(1)CBADの交点Pを表す複素数zz1 , z2を用いて表してください.
(2)OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数wz1 , z2を用いて表してください.
(1)

(2)

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