【1.極座標の定義】 平面上の点Pの位置を極O(xy平面の原点にあたる)からの距離rと始線OXとOPがなす角度θ(偏角という)で表したものを極座標といいます. 点Pの極座標はP(r, θ)の形で書きます.
【例】
右図の各点の極座標は です. 角度θを1回転すると同じ位置に来るので,θ+2nπで表される点は同じ場所になります. 必要に応じて,0≦θ<2πの範囲に制限する場合や,制限なしで使う場合もあります. また,rは通常r≧0を使いますが,負の値も使いたい場合は,偏角にπを加えたものを考えます.
【例】
は,と同じです. |
【2.極座標と直交座標との関係】 右図より,次の関係があります. (r, θ)→(x, y)
x=rcosθ
(x, y)→(r, θ)y=rsinθ θはとなる角です 【3.極方程式の例】 極方程式は,平面上の図形をr, θの関係式として表すものです.
【例1】
中心が極Oにあって,半径が1の円の方程式は r=1 (方程式に書かれていない変数θは任意の角をとり得るものと解釈されます.したがって0≦θ<2πの1回転するすべての点を表すから,円になります.) 【例2】 偏角がαの直線の方程式は θ=α (方程式に書かれていない変数rは任意の角をとり得るものと解釈されます. r≧0に制限すれば半直線になりますが,r<0のときθ=α+πとすると,右図の赤で示した部分も含まれ,直線になります.) |
【例題1】
(解説)(極座標で)点A(h, α)を通り,OAに垂直な直線の方程式は rcos(θ−α)=h 点P(r, θ)が題意を満たす直線上にあれば,右図の△POAは∠OAPが直角の直角三角形になり,∠POA=θ−αになるから rcos(θ−α)=h…(1) が成り立ちます.(逆も言えます) この形の直線をxy座標に直すには,三角関数の加法定理で展開します r(cosθcosα+sinθsinα)=h rcosθcosα+rsinθsinα=h ここで,rcosθ=x, rsinθ=yだから xcosα+ysinα=h この形はヘッセの標準形と呼ばれます. |
(さらに具体的に)
1) 点A(2, 0)を通り,OAに垂直な直線の方程式は
rcos(θ−0)=2 rcosθ=2
xy座標で書けば
xcos0+ysin0=2 x=2
2) 点を通り,OAに垂直な直線の方程式は
xy座標で書けば
y=2
3) 点を通り,OAに垂直な直線の方程式は
(ただし,はとなる角)
xy座標で書けば
|
【問題1】 次の極方程式をxy直交座標の方程式に直してください.また,そのグラフを図示してください.
(1)
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(解答)
…(答) ■ 極座標で考えれば ■ (極座標で表した)点を通り,OAに垂直な直線上に点P(r, θ)をとると,△POAは∠POA=の直角三角形となるから すなわちが成り立つ. ■ 直交座標:円の接線で考えれば ■ 原点を中心とする半径2の円x2+y2=4の円周上の点 すなわち における接線の方程式は (右図の黄緑色が円) ■ 直交座標:垂線の方程式で考えれば ■ (極座標の)すなわち(直交座標の)について OAの傾きはだから OAに垂直な直線の傾きは を通り,傾きの直線の方程式は |
(2)
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(解答)
…(答) ■ 極座標で考えれば ■ 始線から時計回りにだけ回った直線OHを考え,動点Pからこの直線OHに垂線を引くと,△POHは∠POH=の直角三角形となるから, そこで,始線から時計回りにだけ回った直線OHからの距離が2となる直線上に点Pをとると, すなわちが成り立つ. ■ cosθで考えれば ■ 三角関数の公式を用いると は,(極座標で表した)点を通り,OAに垂直な直線を表す. |
【問題2】 次の直線の方程式を極方程式で表してください.また,そのグラフを図示してください.
(1)
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三角関数の合成公式
(解答)ここで,角は となる角 を代入すると …(答) |
(2)
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(解答)
三角関数の合成公式(余弦版)
を代入するとここで,角は となる角 …(答) 【例題1】を参考にすると,このグラフは,(極座標で表した)点を通り,OAに垂直な直線になる. |
【4.2次曲線と焦点,準線】 定直線lと定点Fからの距離の比が一定eである動点Pの軌跡は2次曲線と呼ばれる. (が一定)
定直線lは準線,定点Fは焦点,比率eは離心率と呼ばれます
0<e<1のとき,楕円になります.e=1のとき,放物線になります. e>1のとき,双曲線になります. |
楕円,例えばe=0.5の場合,動点Pがちょうど始線OX上に来るとき,PH:PF=2:1だから,Pは線分HFを2:1に内分する点と2:1に外分する点を通ることになります.
このように楕円(0<e<1)は,始線OXと2回交わりますが,放物線や双曲線では,1つの曲線が始線OXと交わるのは1回です.
|
【5.焦点を極とするときの2次曲線の極方程式】 ≪1≫ 準線を焦点の左に描く場合
教科書や参考書では,この図と式で解説されていることが多い(分母のecosθの符号に関係します)
焦点から始線に垂直な直線を引き,曲線との交点をL,FL=l,焦点から準線までの距離をFA=aとおくとき[A] 楕円の図では
(が一定)
より PF=ePH…(1) PH=FA+rcosθ…(2) (2)を(1)に代入すると r=e(a+rcosθ) r=ae+ercosθ r(1−ecosθ)=ae この形で使うこともありますが,PFが始線OXに垂直になるとき,すなわち右図でLに来るとき l=ae だから
※≪xy直交座標(このページ)の離心率との関係≫
右図のような楕円 において,極方程式で定義される離心率 は, に等しいことが示せます.→(*) すなわち,離心率は「長軸の長さに対する焦点間の距離の比」によって,焦点の(中心からの)離れ具合を表しています.
(*)←
結局,のとき,2つの焦点がくっついて円になり,のとき2つの焦点がどんどん離れて行って放物線になります.
のとき すなわちが離心率になります.
扁平率
なお,類似の用語として扁平率というものがありますが,高校数学では登場しません.右の定義では,縦横が等しい場合(円:のとき)に扁平率が0になり,横長になるほど(のとき)扁平率が1に近付くことになりいます.
タイヤの扁平率
一層話がややこしくなりますが,日常生活で時々聞くのは「タイヤの扁平率」です.(%)など こちらの定義は,業界用語なのか,数学の扁平率とはまた異なり,縦÷横の百分率なので,扁平率が0に近付くほど横長になります. |
[B] 双曲線の図では
図も式も楕円の場合とほとんど同じです.
すなわち ですが,離心率がe>1なので,PFがPHよりも長い図を描きます.
双曲線では離心率がe>1なので,ecosθ>1すなわち1−ecosθ<0となることがあります.
双曲線には漸近線があり,漸近線の方向よりも始線側の となる偏角θ(右図で桃色の背景色で示した範囲)では,焦点から偏角θ方向に伸ばしていっても,青で示した双曲線には当たりません. この場合,r<0となるので,偏角がθ+πを表すと解釈して,左に描かれる赤の曲線になります. ちょうど となる偏角θ(第1象限と第4象限にあります)は漸近線の方向を表しており,この角θに対しては,曲線は定義されません.
※双曲線は特別ということではありません.ずーっと前に述べた直線の方程式【例題1】の具体例として,次のような直線を考えてみます.
この方程式をxy直交座標に直すと となって,右図のようなグラフになります. この直線において,およびのときは,青で示した点Pになり見た目の通りですが,のときは,となるので,偏角をの代わりにを使って,とします.(赤で示した点P) ※このグラフでは,θが0から2πまで1周する間に,直線は重ねて2回描かれます.
※≪xy直交座標(このページ)の離心率との関係≫
[C] 放物線の図では右図のような双曲線 において,極方程式で定義される離心率 は, に等しいことが示せます.→(*) すなわち,離心率は「主軸の長さに対する焦点間の距離の比」によって,焦点の(中心からの)離れ具合を表しています.(双曲線では長軸と呼ばずに主軸という) 1) のとき,となるから,と読み替えると,図のA’の点を表す. このとき,離心率は…(*1) 2) のとき, このとき,離心率は…(*2) (*)← (*1)(*2)より すなわち,
図も式も楕円や双曲線とほとんど同じですが,離心率がe=1なので,式が少し簡単になります.
放物線の極方程式では,分母1−cosθが0になって,曲線が定義されない角が1つあります.それはθ=0です.
これに対してθ=πのときは,点Pが始線上に来ます. |
≪2≫ 準線を焦点の右に描く場合
分母のecosθの符号に注意してください
(楕円の場合,右側の)焦点F’から始線に垂直な直線を引き,曲線との交点をL,F’L=l,焦点から準線までの距離をF’A=aとおくとき[A] 楕円の図では
(が一定)
より PF’=ePH…(1) PH=F’A−rcosθ…(2) (2)を(1)に代入すると r=e(a−rcosθ) r=ae−ercosθ r(1+ecosθ)=ae この形で使うこともありますが,PF ’が始線OXに垂直になるとき,すなわち右図でLに来るとき l=ae だから |
[B][C] 双曲線,放物線も同様にecosθの符号が正になります
【要約】
≪1≫ 準線を焦点の左に描く場合
0<e<1のとき楕円
≪2≫ 準線を焦点の右に描く場合
e=1のとき放物線 e>1のとき双曲線 ※双曲線の場合,となる偏角θに対しては,グラフは準線の左に現れる.
0<e<1のとき楕円
e=1のとき放物線 e>1のとき双曲線 ※双曲線の場合,となる偏角θに対しては,グラフは準線の右に現れる. |
【問題3】 次の極方程式で表されるグラフを図示してください.また,離心率と(xy直交座標で表した)準線の方程式を答えて下さい.
(1)
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(解答)
離心率はe=0.5(楕円) (xy直交座標で表した)準線の方程式をx=−aとすると, 0.5a=2 より a=4 準線の方程式はx=−4
右図の青で示した点(長軸の左端)はθ=π →により得られる.
右図の赤で示した点(長軸の右端)はθ=0 → r=4により得られる. |
(2)
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(解答)
公式のまま読み取るためには,分母の定数項が1になっていなければなりませんので,次のように変形します. 離心率はe=2(双曲線) (xy直交座標で表した)準線の方程式をx=−aとすると, 2a=1.5 より a=0.75 準線の方程式はx=−0.75
右図の青で示した線(双曲線の右半分)はのとき描かれる.
右図の赤で示した点(双曲線の左半分)はのとき描かれる.(r<0だからの偏角を使う) |
(3)
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(4)
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(解答)
公式のまま読み取るためには,分母の定数項が1になっていなければなりませんので,次のように変形します. 離心率は(楕円) (xy直交座標で表した)準線の方程式をx=aとすると, ae=1 より a=3 準線の方程式はx=3 |
【6.円の極方程式】 [1] 極Oを中心とする半径aの円 r=a
方程式に明示されていない偏角はθは,任意の値をとる.任意の値をとるから,指定された半径aで一周すると円になる
[2] 極Oと点を直径の両端とする円(ただし,点Aは極座標表示で,aはAの動径の長さ,はAの偏角)
OAは直径だから,∠OPAは直角で,△OPAは直角三角形
OP=OAcos∠AOP だから |
[3] 点を中心とする半径Rの円(ただし,点Aは極座標表示で,aはAの動径の長さ,αはAの偏角)
△OPAにおいて,∠POA=θ−αだから,余弦定理を適用すると
が成り立つ. |
【問題4】 次の極方程式で表されるグラフを図示してください.
(1)
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(解答)
始線上に(極座標で)点A(2, 0)をとり,OAを直径とする円を描くと,∠APOが直角となるから が成り立つ.
xy直交座標に直して考える場合
は点C(1, 0)を中心とする半径1の円
※直線の方程式と円の方程式は,似ているようで似ていない!
直線→ 円→ |
(2)
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(解答)
(極座標で)点をとり,OAを直径とする円を描くと,∠APOが直角となるから が成り立つ.
xy直交座標に直して考える場合
は(xy直交座標で),(極座標で)を中心とする半径1の円
※(1)のグラフをだけ回転してできるグラフの方程式は,方程式のの代わりにを代入したもの
|
(3)
参考答案を見る参考答案を隠す |
(xy直交座標で表された次の方程式を極方程式に直し,グラフを描いてください.)
参考答案を見る参考答案を隠す(4)
(解答)
xy直交座標のままでグラフを考えると,点C(1, 1)を中心とする半径1の円だから,右図のようになります.
極方程式に直すにはx=rcosθ, y=sinθを代入します.
…(答)
図を見て直接に極方程式を書く場合は,【6.円の極方程式】[3] において,を代入したものになるから,
…(答) |
【7.2次曲線の媒介変数表示】 [A](1) 原点を中心とする円x2+y2=r2の媒介変数表示
x=rcosθ
y=rsinθ (0≦θ<2π)
rは原点から動点Pまでの距離.θは,始線OXから動点Pまでの偏角
(2) 点(a, b)を中心とする円(x−a)2+(y−b)2=r2の媒介変数表示
x=a+rcosθ
y=b+rsinθ (0≦θ<2π)
rは中心(a, b)から動点Pまでの距離.θは,始線方向から動点Pまでの偏角
|
[B] 原点を中心とする楕円の媒介変数表示
x=acosθ
y=bsinθ (0≦θ<2π)
ただし,θは,始線から動点Pまでの偏角ではないことに注意
(以下,長軸がx方向,短軸がy方向を向いている場合について述べる)
そもそも,楕円上の点P(x, y)は円x2+y2=a2の周上の各点Q(X, Y)を,x方向は変えず,y方向だけ一定比率に拡大して得られます. 上記の角度θは,この補助として使う点Q(X, Y)が始線方向となす角です.
X 2+Y 2=a2
x=X 補助の変数X, Yを消去すると
小さい方の円x2+y2=b2の周上の各点Q(X, Y)を,y方向は変えず,x方向だけ一定比率に拡大しても同じ結果が得られます.
X 2+Y 2=b2 y=Y 補助の変数X, Yを消去すると |
[C] 原点を中心とする双曲線の媒介変数表示
()
ただし,θは,始線から動点Pまでの偏角ではなく,原点を中心とする半径aの円周上の点をQとして,この補助として使う点Q(X, Y)が始線方向となす角です.
まず,三角関数の相互関係についての次の公式を思い出してください.
両辺をで割ると したがって そこで,上の図のように点P, Qをとると これに対して と定めると が成り立つ. |
[D] 頂点O(0, 0),焦点F(p, 0),準線x=−pの放物線y2=4pxの媒介変数表示
()
ただし,θは,始線から動点Pまでの偏角ではなく,動点Pにおける接線がx軸となす角(∠PQF)です.
放物線y2=4px上の動点P(x1 ,y1)における接線の方程式は
y1y=2p(x+x1) (解説はこのページ) その傾きは また,準線上の点H(−p, y1)と焦点F(p, 0)を結ぶ直線HFの傾きは だから,PQ⊥HFが成り立つ.このとき,∠FHF’=θとなるから y2=4pxに代入すると |
【8.を用いた媒介変数表示】 三角関数の半角公式の応用として,sinθ, cosθ, tanθはいずれもを用いて表せます.(解説はこのページ) これを用いると,【7】で述べた媒介変数表示は,次の形になります.(ただし,に対応する点は除外点となり,表せません.) [A] 円x2+y2=r2 |
[B] 楕円 |
【問題5】
次の媒介変数で表されるグラフを図示してください.
参考答案を見る参考答案を隠す(1) |
(2) のとき,のとり得る値の範囲を求めてください.
参考答案を見る参考答案を隠す |
(3) のとき,のとり得る値の範囲を求めてください.
参考答案を見る参考答案を隠す |
(4) のとき,のとり得る値の範囲を求めてください.
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(解答) 条件式から変数を代入しようとしても,このままの形では代入できないので の形で代入すると,求める関数が1変数で表せる. ただし,角は , となる角 のときだから のとき, 最大値 のとき, 最小値 |
■[個別の頁からの質問に対する回答][2次曲線の極方程式と媒介変数表示について/18.8.17]
5.焦点を極とするときの二次曲線の極方程式の、''極とする''とはどういう意味なんでしょうか?
■[個別の頁からの質問に対する回答][2次曲線の極方程式と媒介変数表示について/18.8.17]
=>[作者]:連絡ありがとう.ある点を極とすれば,その点のrは0になります.(x,y)座標の言い方で言えば,その点が原点になります. 一般に,座標でどの点を原点とするかは分析者が自由に選べるので,元の(x,y)座標の(1,0)を原点とするとか,元の(r,θ)座標の(1,0)を極とするというようなことは自由に定めることができます.…「とする」で質問があるのは「想定外です」.xを1とすると書いたときに,「とする」とは何かと質問するかな? この話は,ある科目の時間に「○○とは何ですか」と質問しているのに「○○は○○じゃ」と答えている予習不足の教員の回答とは違うことに注意.そもそも,親がこの子の名前を「○○とする」と言ったときに,「とする」とは何かと質問するのは,おかしくないか? 問題5の(4)の最大値の計算で、3/2+〈(5√5)/2〉(cos(2θ-α))を3/2+〈(5√5)/2〉(sin(2θ-α))として計算していませんか?
θ=π/4+α/2のとき最大値は3/2だと思うのですが
=>[作者]:連絡ありがとう.重要なところを突いていますが,結論は微妙に違います.解答の結論は変わらず,途中経過の一部を訂正しました. |